2019 年 33 巻 1 号 p. 32-36
症例は83歳男性で,2012年1月に肺癌に対し左肺上葉切除術を行った.術後病理診断はstage IIBであったが,高齢でありまた維持透析中であったため術後補助化学療法は行わず画像検査のみを行っていた.術後11ヵ月目の胸腹部CT検査で肝S8に径1.5 cmの腫瘤が認められ,肺癌孤立性肝転移再発の診断となり,肝部分切除術を行った.術後病理検査は転移性扁平上皮癌で肺癌肝転移の診断となった.肝切除後5年を経過しているが現在無再発生存中である.肺癌の肝転移症例は切除の対象となることは少ないが,他に非治癒因子がなく肝転移巣が完全に切除できるのであれば肝切除により予後の改善が見込める症例が存在すると思われた.