日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
妊婦に合併した縦隔成熟奇形腫に対して手術を行った1例
宮内 俊策枝園 和彦宗 淳一山本 寛斉山根 正修豊岡 伸一
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2019 年 33 巻 6 号 p. 624-628

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抄録

縦隔成熟奇形腫は無症状で検診発見されることが多いが,時に急速に増大することがある.今回我々は,妊婦に合併し急速に増大したため妊娠中に手術を施行した症例を経験した.症例は27歳,女性.検診で胸部異常陰影を指摘され当科受診となった.初診時,患者は妊娠10週の妊婦であった.胸部X線写真で右上肺野中枢側に8 cm大の腫瘤影,単純MRIで前縦隔に10 cm大の多房性囊胞性病変を認め,成熟奇形腫が疑われた.右前胸部痛が出現しており,腫瘍の急速な増大が考えられ手術の方針とした.手術は妊娠15週に胸骨正中切開で縦隔腫瘍摘出術,右肺上葉・心膜合併部分切除術を施行した.腫瘍は成熟奇形腫の診断で未熟成分や悪性所見は認めなかった.術後経過は良好で,妊娠40週で正常分娩に至った.妊娠と急速増大との因果関係は不明であるが,本症例のような場合でも術前検査や手術時期・方法に注意すれば妊娠中でも安全に手術が行えると考える.

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