肺犬糸状虫症は肺癌,転移性肺腫瘍,他の良性腫瘍との鑑別が困難であることが多い.今回我々は肺犬糸状虫症の1例を経験したので報告する.症例は52歳男性.左肺腫瘍の精査加療目的に当院を紹介された.胸部単純CT検査で左下葉外側辺縁に境界明瞭で辺縁整な28×22 mmの結節を認めた.転移性腫瘍などの悪性腫瘍との鑑別を要し,診断確定のために胸腔鏡下左肺部分切除術を施行した.摘出標本の病理組織学的検査で寄生虫塞栓による陳旧性肺梗塞と診断した.肺犬糸状虫症は自然軽快し得るとされているが,悪性腫瘍との鑑別が必要であることが多く,積極的な外科的切除による治療が望ましいと思われた.