症例は70歳代,男性.糖尿病などで当院内科にてフォロー中,胸部CTにて右上葉に22×15 mm大の腫瘤を認め,当科に紹介となった.気管支鏡検査を行い,右B2入口部で内腔に突出する腫瘤を認め,同部で組織生検を実施し,肺腺癌との診断を得た.全身検査の結果,stageIA3の肺癌と判断し,胸腔鏡下右上葉切除術を実施した.組織診断の結果,腫瘍は唾液腺型の悪性多形腺腫と考えられ,最終的に多形腺腫由来癌(carcinoma ex pleomorphic adenoma)と判断した.気管,気管支および肺原発の唾液腺型多形腺腫は稀な疾患であるが,その多くは組織学的に良性腫瘍である.組織学的に悪性と診断された症例は,自験例を含めて本邦では18例のみで,非常に稀な疾患と考えられた.