2020 年 34 巻 1 号 p. 30-34
症例は81歳女性.2009年に喀血を主訴に受診し,左胸腔に石灰化を伴う腫瘤を指摘された.結核菌排菌を認めたため肺結核として化学療法を開始した.その後,排菌は認めなくなり自覚症状も改善したが,腫瘤の増大を認めた.chronic expanding hematoma(CEH)と診断し手術を勧めたが経過観察を希望した.2014年4月に喀血と体動時呼吸困難が出現した.排菌は認めなかったが,血腫はさらに増大し縦隔偏位も伴っていたため,当症例に対して左胸膜肺全摘(EPP)を施行した.術後縦隔偏位は解除され呼吸困難も改善した.不用意な血腫周囲の手術操作は出血や再発の危険性を高めるため,患側肺の機能回復が期待できない自験例のようなCEHに対しては,EPPは有効な術式であると考えられた.