2020 年 34 巻 1 号 p. 67-71
症例は46歳女性.健診で胸部異常陰影を指摘された.胸部CTにて中縦隔に造影効果を有する4.3 cm大の腫瘤が確認され,胸部MRIではT1強調像で低信号,拡散強調像で淡く高信号であった.123I-MIBGシンチグラフィ上,同部位に核種の取り込みを認め,傍神経節細胞腫を疑った.胸骨正中切開,人工心肺補助下に中縦隔腫瘍摘出術を施行した.大動脈弓および冠動脈から腫瘍へ流入する血管を多数認め,それぞれを結紮切離した.術後病理所見では腫大した類円形核に豊富な細胞質を有する腫瘍細胞を認め,免疫染色所見はchromogranin A(+),synaptophysin(+),CD56(+)であり,傍神経節細胞腫と診断した.術後1年6ヵ月が経過したが明らかな再発は認めていない.傍神経節細胞腫は中縦隔に発生する頻度は稀ではあるが,特徴的な画像所見から術前診断を得て手術に臨むことのできる疾患であると考えられた.