日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
瘻孔の同定にインドシアニングリーンの腹腔内注入と赤外光観察が有用であった横隔膜交通症の1例
檜山 紀子柳谷 昌弘松本 順
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2020 年 34 巻 6 号 p. 612-616

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抄録

横隔膜交通症の外科的治療では確実な瘻孔の同定が必要である.今回我々はコントロール不良な肝性胸腹水を伴う横隔膜交通症に対して,インドシアニングリーンの腹腔内注入を併用し,赤外光観察可能な胸腔鏡を用いて瘻孔を同定し,良好な経過を得た1例を経験したので報告する.症例は50歳代男性,腎硬化症で維持血液透析中,肝硬変による大量腹水貯留で経過観察中に咳嗽・息切れを自覚した.精査の結果右大量胸水の貯留を認め,横隔膜交通症の疑いで審査胸腔鏡を行った.術前日に挿入した腹腔ドレーンから色素を注入しても自然光下では横隔膜に明らかな変化を認めなかったが,インドシアニングリーンを注入し赤外光下に観察すると菲薄化した瘻孔からの色素の漏出が確認できた.自動縫合器を用いて瘻孔を切除し,切除断端をポリグリコール酸シートとフィブリン糊で被覆した.本法は横隔膜交通症の瘻孔部位の同定に有用であった.

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