日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
縦隔内異所性副甲状腺腺腫術後に低カルシウム血症が遷延した1例
川本 常喬井野川 英利沖田 理貴古川 公之林 雅太郎岡部 和倫
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2020 年 34 巻 6 号 p. 628-634

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抄録

症例は37歳女性.高Ca血症,intact PTH高値を契機に,CT検査で前縦隔腫瘤を指摘された.99mTc-MIBIシンチグラフィーで異常集積を認め,縦隔内異所性副甲状腺腺腫による原発性副甲状腺機能亢進症(以下:PHPT)と診断された.胸腔内炭酸ガス送気併用右胸腔鏡下前縦隔腫瘍摘出術を施行した.術後1病日に低Ca血症および四肢の痺れを認めた.カルシウムを補充し,以後血清Ca値は正常下限で推移したが,四肢の痺れは術後9病日まで持続した.PHPTの治療は腫瘍の外科的切除が推奨される.血清Ca値は術後早期から低下し,術後2-4病日目に最低値となる症例が多いが,4-24%の症例では低Ca血症が遷延するとされる.近年,胸腔鏡手術が普及し入院期間が短縮可能となったが,PHPTの術後は低Ca血症の遷延を念頭に置いた身体所見や血清Ca値の慎重な経過観察が必要である.

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