症例は30歳男性,左II度気胸再発で手術の方針となった.胸部CTでは左上区に限局した多発肺囊胞を認めた.術中所見でも大小不同の薄壁ブラが左上区に限局して多発しており,気胸の責任病巣と考えられたブラを1ヵ所切除した.切除標本では気腫性変化を背景にブラを認めたが,周囲の炎症性変化に乏しく,上皮は脱落しており肺胞上皮の形態学的な評価はできなかった.左上区に限局した囊胞発生機序として,何らかの原因による気管支閉鎖が考えられたが,画像上,明らかな区域気管支の閉鎖や粘液栓は指摘できなかった.本症例では,感染などを契機として一過性に粘液物質が貯留し,気道閉塞を生じたことが原因と考えられた.確定診断には至らなかったが,同様な症例は少なからず存在すると考えられ,今後のさらなる知見の集積が必要である.