2021 年 35 巻 2 号 p. 132-137
症例は24歳,男性.左自然気胸と甲状腺機能亢進症を指摘され来院した.胸部CT検査で左胸腔への心臓逸脱を認め,心膜欠損症が疑われた.胸腔ドレナージを施行し,未治療の甲状腺機能亢進症に対する治療も開始されたが,入院1週間後も気漏が持続したため追加治療が検討された.甲状腺クリーゼ発症の危険性がありできる限り侵襲の少ない治療を検討したが,画像上心膜欠損が疑われていたため直接心臓に炎症を波及させる可能性のある胸膜癒着療法は選択しないこととし,胸腔鏡下肺囊胞切除術を行った.手術時,胸腔鏡所見で完全心膜欠損,左縦隔胸膜欠損を認めたが,完全欠損であり嵌頓の危険性がなく,肺切除量がわずかで術後の心偏位に影響はないと考え修復術は施行しなかった.術後経過は良好であった.