日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
Print ISSN : 0919-0945
ISSN-L : 0919-0945
症例
シクロスポリン導入治療後に拡大胸腺摘出術を行うことにより寛解となった硬化性胸腺腫合併赤芽球癆の1例
橋本 博史小森 和幸吉川 滉太郎田口 眞一尾関 雄一
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 35 巻 4 号 p. 264-269

詳細
抄録

症例は78歳女性.全身倦怠感を主訴に受診,著明な貧血を認めたため当院血液内科を紹介.精査の結果赤芽球癆と診断,またCTで前縦隔腫瘍(胸腺腫)を認めた.シクロスポリンによる治療を開始し,貧血は輸血が不要な程度に改善した.胸腺腫の切除につき当科紹介となった.重症筋無力症合併例に準じて拡大胸腺摘出術を胸骨正中切開下に施行した.前縦隔腫瘍の病理診断はsclerosing thymoma(硬化性胸腺腫)であった.周術期に貧血の進行を認めず,また退院後もシクロスポリンの再投与を必要とせず寛解に至ったと考えられた.術後2年の現在無治療で貧血の進行を認めていない.胸腺腫合併赤芽球癆に対する胸腺摘出術の治療効果は乏しく,シクロスポリンやステロイドによる全身治療が効果的とされている.今回胸腺腫合併赤芽球癆に対してシクロスポリンによる導入療法後に拡大胸腺摘出術を行い,全身治療が不要となり寛解した1例を経験した.

著者関連情報
© 2021 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top