2021 年 35 巻 4 号 p. 276-280
症例は72歳,男性.他疾患の治療中に左肺上葉S1+2に全体径3.1 cm,充実径1.6 cmの腫瘤影を指摘され,造影CTにて右上葉肺静脈の一部が上大静脈に還流する部分肺静脈還流異常(PAPVC)を認めた.PAPVCが非切除肺葉にある場合の肺切除はシャント率を増大させ右心不全を発症するリスクがある.術前右心カテーテル検査で左A1+2a+bの選択的閉塞でも肺体血流比(Qp/Qs)は1.23でありPAPVCに対する血行再建は必要ないと考え,左上葉肺癌に対し左S1+2区域切除術を行った.術後1年経過したが右心不全発症無く経過観察中である.