日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
胸壁合併切除を行った肋骨破壊を伴う肺ムコール症の一例
伊藤 龍一月岡 卓馬泉 信博小松 弘明井上 英俊西山 典利
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2021 年 35 巻 6 号 p. 659-664

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抄録

ムコール症は日和見感染症として基礎疾患を有する患者に生じやすいが,骨破壊を伴う事は稀である.今回胸壁浸潤を伴う肺ムコール症に対し胸壁合併切除を伴う肺切除を行うことで良好な経過を得た一例を経験したので報告する.症例は66歳女性.急性骨髄性白血病に対し化学療法中,治療開始18日目に胸痛が出現,CTで左上葉肺炎を認めた.侵襲性肺アスペルギルス症を疑いアムホテリシンBによる治療を開始するも抗真菌薬抵抗性であり,各種検査からも確定診断は得られなかった.90 mm大の膿瘍形成と骨破壊が出現したため診断と治療をかねて左肺上区域切除術及び第3-5肋骨合併切除を施行した.手術検体から肺ムコール症の診断を得た.術後経過は良好であり,ムコール症の再燃無く化学療法を再開した.広範囲の胸壁合併切除により根治切除を行う一方で,区域切除による肺機能温存で全身状態も良好であり,原疾患に対する早期の治療再開が可能であった.

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