2022 年 36 巻 4 号 p. 382-388
症例は51歳,女性.潰瘍性大腸炎に対して19年前より薬物療法が開始され,寛解が維持されていた.胸部CT検査で左肺下葉に内部に低吸収域を伴う腫瘤影を認めた.増大傾向を認め,原発性肺癌が疑われたため左肺下葉切除術を施行した.病理組織所見では悪性所見は認めず,高度な炎症性細胞浸潤,膿瘍形成,杯細胞減少など潰瘍性大腸炎活動期の腸管病変に類似した所見であったため,臨床経過と併せて潰瘍性大腸炎合併肺肉芽腫と診断した.潰瘍性大腸炎を含めた炎症性腸疾患はさまざまな臓器に腸管外合併症を認めることがあり,炎症性腸疾患に合併する肉芽腫は肺癌との画像診断は困難である.病理組織学的にも多彩な所見を示すため,少量の検体量では確定診断は困難な場合が多く,手術検体を用いた病理組織学的診断が必要となることがある.