症例は77歳女性.左上葉肺癌の疑い(cT1miN0M0 stage1A1)に対して胸腔鏡下左肺舌区切除を施行した.手術時間は130分で出血は少量であった.手術1時間後に徐脈と血圧低下を認め洞不全症候群とこれに伴う血圧低下と判断した.カテコラミンおよび輸液負荷で全身状態は安定したもののその後数日間に渡り緩徐に進行する貧血を認めた.胸腔内出血は否定的であり経過観察としたが第7病日の血液検査で炎症反応の上昇を認め,精査目的に撮影した腹部造影CT検査で多量の血性腹水および脾臓の楔状造影欠損域を指摘され脾臓損傷によると考えられる腹腔内出血と診断した.この時点では明らかな活動性出血は認めなかったため保存的治療の方針とし,貧血進行がないことを確認して第25病日に退院となった.術後に血圧低下や貧血進行を認めた場合は心原性ショックや胸腔内出血による出血性ショック以外にも腹腔内出血を疑い精査を行う必要がある.