2022 年 36 巻 4 号 p. 441-447
気管腫瘍に対する外科的治療は,症例に合わせた術式および術中管理の工夫が必要である.今回我々は,原発性気管腫瘍に対してVV-ECMO併用下での1切除例を経験した.症例は55歳女性.慢性咳嗽を主訴に前医を受診し,精査で声帯より2 cm末梢の気管膜様部に有茎性の腫瘍を認め,手術目的に当院へ紹介となった.VV-ECMO併用下(脱血:右大腿静脈,送血:右鎖骨下静脈),頸部襟状切開での気管環状切除(第1-2気管軟骨輪),気管端々吻合を行った.病理組織診断は,炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor,IMT)の診断であった.気道閉塞リスクが高い気管腫瘍手術において,覚醒下でのECMO導入は有用と考えられる.また,出血量増加などの術中合併症リスクを回避しつつ,術野確保などの安全性を向上できる可能性がある.