2022 年 36 巻 4 号 p. 448-454
症例は75歳,男性.2週間前から労作時の呼吸苦が出現し,増悪したため,当院へ救急搬送された.II度の左気胸を認め,胸腔ドレナージを施行し入院とした.気瘻が持続したため手術適応と判断し,胸腔鏡下肺囊胞切除術を施行し,術後4日目に退院した.切除した肺は病理組織学的に血管肉腫と診断され,全身精査したところ,頭皮に易出血性腫瘤を認めた.以上から,頭皮原発血管肉腫の多発肺転移という診断で,ドセタキセル単剤による化学療法を開始した.その後も異時性に両側気胸を複数回繰り返したが,いずれも胸膜癒着療法にて軽快した.化学療法は一定の効果をもたらしたが,3コース終了後に喀血し,その吸引性肺炎により死亡した.血管肉腫は皮膚科領域疾患であるが,高率に肺転移を合併し,続発性気胸を繰り返すことが多く,呼吸器外科医も疾患の特徴をよく理解しておく必要があるため報告する.