日本呼吸器外科学会雑誌
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自家遊離空腸・人工血管複合体によるイヌ気管再建に関する研究
bFGF局所投与の効果
笹野 進大貫 恭正小山 邦広銭 勇新田 澄郎
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1997 年 11 巻 7 号 p. 798-806

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抄録

代用気管への応用を目指して, イヌ自家遊離空腸とDacron製人工血管による複合体を作製し, 頸部気管の置換実験を行った (n=18).遊離空腸の粘膜上皮, 粘膜固有層を鈍的に剥離し, basic fibroblastgrowth factor (bFGF) を溶解したフィブリン糊を用いて人工血管内面に接着し, 複合体を作製した.頸部気管を約20mm (4~5軟骨輪) 切除し, 複合体を置換吻合した.漏水量の低いwoven Dacron人工血管を使用し, bFGF を使用しなかった群 (I群, n=3), bFGF濃度を2.5μg/mlにした群 (H群, n=3), さらに, 高漏水量のknitted Dacron 人工血管を使用し, bFGF を使用しなかった群 (III群, n=3), bFGF 濃度を2.5μg/mlにした群 (IV群, n=3), bFGF 濃度を5.0μg/mlにした群 (V群, n=6) の5群で比較検討した.I, II, III群では気管粘膜上皮の新生, 新生血管増生は共に認められなかった.V群では, 置換後2週で吻合部において最長5mmの気管粘膜上皮の新生所見が肉眼的, 組織学的に認められ, 複合体周囲の新生血管増生は著明であった.IV群では気管粘膜上皮の新生は認められたが, 新生血管増生はV群より軽度であった.以上より, 自家遊離空腸と高漏水量のknitted Dacron人工血管による複合体は, bFGFを併用することにより有効な代用気管となる可能性が示された.今後, 複合体内面の気管粘膜上皮による完全被覆を達成するためには, 空腸と人工血管の接着方法の検討, poresizeの大きい人工血管あるいはメッシュの使用, 高濃度のbFGF 投与, bFGF 総投与量の増加などを考慮する必要があると考えられた.

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