日本呼吸器外科学会雑誌
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原発性肺癌手術における周術期合併症の対策
植田 真三久坪田 紀明松岡 英仁宮本 良文吉村 雅裕
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2001 年 15 巻 7 号 p. 736-740

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抄録

1984年6月から1999年12月までに行われた原発性肺癌手術症例1, 337例を対象とし, 周術期に問題となった4つの合併症についてそれらの対策と治療成績を述べる.なお術後1ヵ月以内の術死は3例, 0 .2%であった.
(1) 術前に腫瘍に関連した急性呼吸器病変を有した症例 (n=20): 緊急手術となった4例は救命できたが待機手術の閉塞性肺炎1例を術後肺炎で失った.手術時期の決定が術後経過を左右し, 術前からの十分な管理が必要であった. (2) 特発性間質性肺炎を有する症例 (n=10): 初期3例は急性増悪にて死亡したが, 周術期における過剰酸素投与の回避とステロイドパルス療法及び抗生剤の長期投与にて最近の連続7例は治癒退院した. (3) 術後膿胸例 (u=15): 発症時期は急性期が9例 (全例生存), 晩期 (1ヵ月から2年) が6例であった.晩期発症の6例全例に術前補助療法が行われており2例が死亡した. (4) 術後間質性肺炎例 (n=11): ステロイドパルス療法の開始が遅れた初期の5例は死亡したが, 発症早期に治療を開始した最近の連続6症例は救命した.
これらの合併症対策により, 当センターの原発性肺癌手術における全死亡率 (術死+在院死) は前期465例/7年の13例, 2.8%から後期872例/8年の7例, 0.8%に減少した.

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