2001 年 15 巻 7 号 p. 769-773
症例は54歳男性.53歳時の受傷直後の軽症の血気胸に保存的治療 (穿刺吸引) を行い紹介元へ転医した.4日後に突然大量の血胸が生じたため, 持続吸引ドレナージを行い約1ヵ月で退院となった.受傷1年後に横行結腸と大網が嵌頓する遅発性外傷性横隔膜ヘルニア発症を経験した.手術所見より肺の一部がヘルニア栓となって腹腔臓器の滑脱を防いでいたが, ヘルニア栓が外れて遅発性外傷性横隔膜ヘルニアが発症したものと考察した.受傷時, 4日後の横隔膜裂傷時, ヘルニア栓による無症状時, 横隔膜ヘルニア閉塞絞扼時のそれぞれ時期の状態を画像上比較検討し, 横隔膜損傷の手術適応と遅発性外傷性横隔膜ヘルニアの発症機序に関し考察した.