日本呼吸器外科学会雑誌
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フィブリン糊によるパルボウイルスと肝炎ウイルスの感染の可能性について
川村 雅文木村 吉成小山 孝彦山本 学神山 育男後藤 太一郎井上 芳正大塚 崇堀口 速史山内 徳子澤藤 誠渡辺 真純堀之内 宏久小林 紘一
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2002 年 16 巻 4 号 p. 528-532

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抄録

背景: ヒトパルボウイルス (以下パルポ) は熱に対して安定でフィブリン糊で施される低温殺菌 (60℃) では不活化されない.一方B型, C型肝炎ウイルスに対する安全性はこれまで臨床的には明らかにされていなかった.
対象と方法: 1997-9年に術中空気漏れにフィブリン糊 (ベリプラスト) を使用した85例 (全例輸血なし) を対象に, 術前に酵素抗体法 (EIA法) で抗パルポ抗体 (IgG) を, RT-PCR法で血清中パルポDNAを, radioimmunoassay (RIA) 法でHBsAg, HBsAb, HBcAb, HCVAbを測定.術後は2週, 12週, 24週, 48週のうち少なくとも2ポイントで測定.
結果: 術前血で抗パルポ抗体は, 85例中56例 (65.9%) で陽性 (既感染者), パルポDNAは全例で陰性.術後のパルポDNAは, 術前抗体陽性者では検出されず, 陰性者では29例中6例 (20.7%) で検出された.HBV, HCVの感染はみられなかった.
結語: フィブリン糊はパルポ未感染者の20%にパルポ感染を起こしたが, 肝炎ウイルスの感染は起こさなかった.

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