日本呼吸器外科学会雑誌
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診断に難渋した肺切除後発症の遅発性横隔膜ヘルニアの手術経験
大浦 裕之広瀬 正秀石木 幹人
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2003 年 17 巻 1 号 p. 30-33

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抄録

症例は61歳, 女性.2000年6月肺アスペルギルス症に対する左下葉切除の際に, 横隔膜との癒着剥離を施行した.2001年9月下旬より咳嗽, 上腹部痛および左背部痛が出現し同年10月5日当院を受診した.一般血液検査では特記所見はなかった.理学所見では臍上部に圧痛があったが, 腹膜刺激症状は認めなかった.胸部CT上, 左胸腔内背側に空洞様構造物を認め入院となった.第3病日になり麻痺性イレウスおよび電解質失調が出現し, CT再検にて左胸腔内の構造物が腸管と判明したため, 腹腔臓器の左胸腔内脱出及び嵌頓の診断にて経腹的アプローチによる緊急手術を施行したところ, 胃体上部及び大網が左横隔膜背側のヘルニア孔から胸腔内に脱出し, 嵌頓阻血により壊死に陥っていた.横隔膜裂孔閉鎖術及び近位側胃切除術を施行し手術を終了した.胸部手術時に横隔膜に対する侵襲手技があった場合, 本症発症の可能性を考慮し損傷部位の十分な補強が必要である.

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