2003 年 17 巻 1 号 p. 62-66
症例は44歳, 女性.胸部X線像上, 左肺門部に腫瘤陰影を指摘され, 当院を紹介された.胸部CT像では左前縦隔と前胸壁に接する肺腫瘤影がみられた.経皮肺針生検で悪性所見はなかったが, 悪性腫瘍も否定できなかった.肺梗塞を疑い手術適応とした.深部静脈血栓症の加療歴があったので, 術前に肺梗塞の予防を目的にGreenfield下大静脈フィルターを留置した.左上葉切除術を施行し, 切除肺の病理組織検査で肺梗塞と診断された.術後合併症なく順調に経過している.肺梗塞の症例で, 下大静脈フィルタターを留置しなかった場合, 術後再発が報告されている.術前のフィルター留置は, 肺梗塞の再発予防のため有用と思われた.