日本呼吸器外科学会雑誌
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肺結核治癒後の浄化空洞内に寄生した肺 adiaspiromycosis に対する著者らの “胸壁充填法” の経験
山本 弘大塚 十九郎小林 利子井村 价雄
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1994 年 8 巻 1 号 p. 92-98

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抄録

肺結核治癒後の開放性浄化空洞内に寄生した, 人類の疾患としては稀な人畜共通真菌症adiaspirornycosisの手術例を経験した.本例は臨床経過, 画像所見及び組織像の酷似から, 当初肺aspergillomaと誤診したが, 摘出菌塊の培養で, 本症と判明した.
本症の原因菌は通常土中や木材中に生息するChrysosporium parvum属の真菌で, 野生小哺乳類に肺感染することはあっても, 人肺への感染は極く稀とされる.その場合, 肺内に大小の結節 (肉芽腫) を形成し, 症状はあっても一般に軽微で, 診断は肺生検に委ねられることが多いが, 本例はこれと趣を異にし, 肺結核治癒後の浄化空洞にfungus ballの形で定着し, 血痰を主訴とするなど, 肺aspergillomaと酷似する臨床経過を辿り, 確定診断は術後の菌塊の真菌培養に拠った.
本例は, いくつか合併症を持っていたので, 手術侵襲の軽減目的に, 最小限度の胸郭成形術と, 著者らが “胸壁充填法” と呼称している空洞形成術の組み合わせによる, 複合的腔縮小術を施行した.本法は肺尖・上葉の肺内異常空間にご対して, 我々が愛用している複合的腔縮小術式であるが, 本症例も成功を収めた.

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