抄録
外国語学習者は誰しも「母語+外国語」の学習歴をもち、個別言語能力に還元できない言語能力を育んでいる。本稿は、この個別言語に還元できない統合的言語能力に着目し、その活用、活性化により、学習者の自律的、主体的な言語学習を促進できる複数言語対照連携学習について考察する。具体的には、日本語を母語とする初修中国語学習者の中英同時対照学習システムの構想を対象に、期待される効果と課題について分析する。これにより、本稿は、言語単位に構成される現行の単言語型多言語学習に対して、学習者の内在的な言語能力の活用により、言語活動主体としての学習者の創出、学習者の視点に立つ学習者本位の多言語学習の可能性を展望する。