2023 年 45 巻 1 号 p. 180-190
本研究の目的は,アカデミックライティングに関する正課外での講習会とライティングセンター(WRC)での指導を受けた学生アスリートのライティング力や学習方略に対する効果を明らかにすることである.具体的には,上記ライティング学習支援を受講した学生アスリート4名に対しおよそ1年後にインタビュー調査を行い,グラウンデッドセオリーに基づくデータのコード化とコアカテゴリーの抽出,関連性の構造化(図式化)を行った.分析の結果,250のセグメント(文を基準とした切片)から10のコアカテゴリーが得られ,過去の学習支援と現在のライティング力や学習方略との関連性が明らかとなった.学生アスリートは過去に受講した講習会やWRCで受けた指導の内容を記憶しており,そこで得たライティングの知識や技術を学部の文章作成課題へ活用していた.他方,学部のカリキュラムの特性からライティング学習の経験に偏りが見られた.しかしながら現在の学習経験や自身のライティング力についての省察や知識・技術の不足を補う意欲,WRCおよび大学図書館の活用といった行動が見られるなど,ライティング学習に対する高次の転移が示唆された.