本研究は、里海の概念に基づく地域として干潟を取り上げ、人と干潟とのかかわり方を通して沿岸域の自然環境のあり方について考究した。調査方法は、まず、インタビュー調査を実施し、人々が干潟に対して抱いている認識及び認識に至る過程と原因を把握した。次に、人と干渇とのかかわりを成す生業に着目し、HEP(Habitat Evaluation Procedure、ハビタット評価手続き)を用い、生業の変化に伴う干潟生態系の生物生息地としての価値の変化量を把握した。その結果を以下に示す。
①住民及び市民の干潟に対する認識は、地域のために干潟を活用するという点では同じであったが、住民は経済的価値を干潟に見出していた。一方、市民は環境情報的価値を見出していた。
②海苔養殖支柱柵の減少は、底面摩擦速度の増加を誘引し、アサリの生息環境が悪化する。そのため海苔養殖支柱柵の減少に伴い、干潟の生息地としての価値は減少傾向にある。