2020 年 14 巻 p. 39-50
本研究では,つぶやき読みと黙読の二種類の読み方による読解トレーニングが,学習者の聴解力成績に及ぼす影響について比較分析を行った。119名の学生を対象に,二要因の共分散分析を行った結果,つぶやき読みでは,学習者上位グループでのみ成績の向上が示されたが,学習者下位グループにおいては成績の向上は認められなかった。一方で,黙読では学習者レベルにかかわらず聴解力成績の向上が認められた。つぶやき読みの効果が上位グループに限定された要因としては,音韻情報処理が得意な学習者のみが「音声化」の利点を最大限利用できたことが考えられる。一方で,黙読の効果が学習者レベルを問わず認められたことは,「音声化」の負荷を掛けずとも,音韻情報処理が推進された結果によるとの推察ができる。よって,少ない負荷で聴解力成績への学習効果が期待できるトレーニング法という観点から,黙読の新しい利点が示唆されたと言える。