2025 年 25 巻 5 号 p. 5_116-5_125
盛土の地震時安定検討方法としては,一般に円弧すべり法など,剛体すべりと仮定した簡便な震度法による安定計算が用いられている.しかし,実際の地震時における盛土の被害では,剛体すべりのような崩壊現象だけではなく,盛土内の脆弱部における過剰間隙水圧の発生等に伴う残留変形現象も数多く発生している.このため,剛体すべり計算である震度法を残留変形の検討に適用するに当たっては,変形の外郭部などに該当するすべり面の仮定,強度定数,水平震度及び間隙水圧等の計算パラメータの適切な設定が課題となる.本論では,残留変形が発生した宅地盛土における再現FEM解析より得られた過剰間隙水圧比,及び応答加速度の時刻歴等をもとにして,簡便な震度法による再現ケーススタディを行い,残留変形の発生を適切に再現できる計算条件・パラメータについて考察した.