本研究は, 大都市インナーエリアにおける小規模工場の集積地として, 名古屋市中川区露橋地区を事例に挙げ, 小規模工場群の集積過程, 生産内容, および地域的生産連関より, その実態を解明することを目的としている.露橋地区は, 木材工業によって戦前から工業化が進展したインナーエリアの工業地域である.戦後は, 機械金属工業を中心とした小規模工場の立地が進み, 住工混在の工業集積地が形成された.しかし近年これら小規模工場の閉鎖が進み, 地区人口も減少しつつある.現在, 当地区には多種多様な機械金属工業の加工業者が操業している.地域的な生産連関を見ると, その取引関係が名古屋市を中心とした極めて狭い範囲で行われていることが判明した.しかしながら露橋地区に限ってみると, 地区内での工場間の取引は少なく, 水平的な生産連関はほとんど見られなかった.一方, これらの工場は各受注先との垂直的な結びつきが強く, 個別に見るとそれぞれの垂直的連関において, 各工場独自のフレキシブルな対応が行われていることが明らかになった.