経済地理学年報
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「エコ・ナマズ」にみる湿地の政治生態(大会報告論文,<特集>経済地理学と自然)
池口 明子
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2014 年 60 巻 4 号 p. 264-286

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抄録

近年,環境持続性に配慮した有機食品の市場拡大に伴い,国境を越えたグローバルな有機食品流通が活発化しており,とりわけ生産コストが低い低緯度の南側生産地域から欧米・日本など北側市場への輸出が増加している.こうした有機食品のグローバル化のプロセスにおいてとくに重要な役割を果たすとされるのが,第三者機関認証による環境認証制度であり,環境持続的な生産プロセスを保証する「エコ・ラベル」である.本稿では,国際的な環境認証制度がいかに形成され,南側地域の食の生産や環境にどのような影響を及ぼすのかを考えるための枠組みを,ベトナム・メコンデルタのエコ・ナマズ生産と湿地環境を事例として検討した.グローバル価値連鎖の観点からみると国際環境認証は,質的価値の稀少性を作り出して利益を得るためのガバナンスの一形態であり,生産プロセスを管理する規格策定には環境NGOや科学者など,多様なアクターによる環境ガバナンスが組み込まれている.これらのアクター間の関係と,規格を作り出す知識の関係は,システムを効率化しようとする価値連鎖のガバナンスと,アクター・ネットワークの視点で考えることができる.環境変化と政治的プロセスの関係の分析枠組みである政治生態学にとって,この環境ガバナンスの概念は政治的プロセスの精緻化の点で意義がある.市場による環境ガバナンスの批判的な検討にとって,小規模農民の行動と多様性,およびそれらと生態系との関係性に着目し,その分析方法をさらに発展させることが重要である.

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© 2014 経済地理学会
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