経済地理学年報
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「自然」は自然なものか? : 近年のランニング・ブームに関する一考察(大会報告論文,<特集>経済地理学と自然)
福田 珠己
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2014 年 60 巻 4 号 p. 301-312

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抄録

自然は自然なものなのか-これは,近年,ゆるやかなまとまりをもって展開している自然の地理学における主要課題の1つである.例えば,Noel Castreeは著書Making Sense of Natureで同様の視角から,自然とは何か,問を投げかける.ここで問われているのは,「そこにある自然」がいかなるものであるのかということではなく,私たちが「自然」と称しているものは,いかにして自然となったのかということである.つまり,「自然」というカテゴリーを問うことは,私たちは様々な社会的経済的政治的諸関係のなかで世界を理解しているのか,そのやり方を問うことなのである.本稿では,同様の関心をもち,日本における近年のランニング-特に市民によるランニング-をとりまく状況を自然と身体という視点から分析する.また,ランニング・ブームのもとで自然の地理の生産に関わる表象のポリティクスを問うていく.今日,日本は,いわばランニング・ブームといえるような状況にある.例えば,ブームをけん引したと考えられている東京マラソンには,2004年の大会に定員の10倍を超える30万人余りからエントリーがあった.しかしながら,走る人間の数だけでは,「ブーム」ということはできない.むしろ,ランニングを取り巻く様々なメディアや商品,さらには,地域振興と結びついたランニング大会の開催など,スポーツそのものの枠を超えて社会的な大きなうねりとなっていることが重要なのである.市民スポーツとしてのランニングは,より広い社会的文脈のなかで考察されなければならないのである.本稿では,近年の特徴である増加する女性ランナーに注目し,女性総合誌-ファッションから,健康,美容,旅,文化,芸能などの内容をカバーする-の分析を通して,走るという女性の経験について考察する.その結果,女性ランナーやその身体はどのように表象されているのか,また,自然的なるものとどのように関係づけられているのか,明らかになろう.さらに,ランニングに関する雑誌記事が,関連商品やサービスの広告同様,自然や美の言説の生産に関与していることに注目する.

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© 2014 経済地理学会
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