本講演の目的は,関東の工業地域構造の中における北関東・栃木県の特徴を指摘した上で,経済地理学の産業集積論と特定領域(自治体など)の経済との接点を捉えることである.産業集積論は企業・産業を基礎とする議論であり,企業・産業空間を扱う.そのスケールは生産ネットワークのあり方に規定される.他方で,特定領域の経済には,そのネットワークの一断面だけしか表れない.特定領域の立場からすれば,特定の産業・企業集積への過度の依存は避けたい.特定領域の経済の持続的発展のためには,産業集積のどのような断面と機能がそこに現れているのかを見極め,当該領域の産業集積と適切に対応していくことが重要である.