2007 年 27 巻 7 号 p. 1005-1008
症例は71歳, 男性。2006年8月上旬深夜より突然の下腹部痛を生じ当院を受診。身体所見上, 開腹歴はなく下腹部正中に圧痛, 腹膜刺激症状を認めた。血液生化学所見ではWBCおよびCRPの上昇を認め, 腹部CTではfree airは明らかでないが腹水貯留を伴うイレウス像を呈していた。以上より絞扼性イレウスの可能性も否定できず緊急手術を行った。手術所見は腹腔内に混濁した腹水を認め回腸末端から約30cm口側回腸に魚骨により穿孔したMeckel憩室を認めたため, 憩室切除術を施行した。本人に発症前の食事について詳しく聞くと, 魚骨を誤飲した記憶はないが前日に鯛を食べていた。魚骨は先鋭な2.2cmの鯛の骨と思われ, 摘出標本では穿孔部周囲粘膜に異常を認めなかった。魚骨によるメッケル憩室穿孔は本邦において文献報告14例と少なく, まれな症例である。自験例に加え14例の文献的考察もまとめて報告する。