日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
症例報告
診断的腹腔鏡における生検が確定診断に有効であった結核性腹膜炎の2症例
-急性腹症に対する診断的腹腔鏡の有用性-
植野 望今西 築
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 28 巻 1 号 p. 75-79

詳細
抄録

症例1:イレウスの診断で入院となった 20歳代の女性。諸検査で血清CA 125高値以外に著変を認めず,絞扼性イレウスが疑われたため診断的腹腔鏡を施行した。腹膜に黄白色の播種状粟粒結節を認めた。生検標本の病理組織学的所見で乾酪壊死を伴う類上皮肉芽腫を認め,結核性腹膜炎と診断した。症例2:原因不明の腹水に対する精査目的で入院となった50歳代の女性。腹水の結核菌PCR陰性,アデノシンデアミナーゼ(ADA)活性高値,血清 CA 125高値で,結核性腹膜炎を疑い診断的腹腔鏡を行った。腹腔内全体に白色粟粒結節が認められ,生検標本の病理組織学的所見で結節に類上皮細胞とラングハンス氏型巨細胞を伴う肉芽腫性の炎症像を認めたため結核性腹膜炎と診断した。ともに抗結核薬 4剤併用療法(INH,RFP,EB,PZA)を行い,その後イレウス,腹水は改善した。現在まで再燃はきたしていない。結核性腹膜炎はまれで,本2症例のように,臨床像,検査結果からは確定診断がつきにくく,診断的腹腔鏡による粟粒結節の生検が極めて有用である。

著者関連情報
© 2008 日本腹部救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top