2008 年 28 巻 5 号 p. 725-729
今回われわれは,Meckel憩室の軸捻転により腸閉塞をきたした1症例を経験したので,報告する。症例は32歳女性で,主訴は下腹部痛。造影CTにて腹部に著明に拡張して最大径が7cmになった小腸ループを認めた。著明な腸管拡張を伴う紋扼性イレウスと診断し,緊急手術を施行した。回腸が紡錘状に拡張し,捻転して閉塞しており,腸切除を行った。病理組織検査にて,回腸粘膜から粘膜下層にかけて固有胃腺を認め,Meckel憩室と診断した。捻転をきたすMeckel憩室は,憩室の径が大きく頚部でくびれを持つことが多いが,本症例の憩室は明らかなくびれを有しておらず,憩室の付着した回腸全体が紡錘状に拡張しているような形態であり,捻転の機序としてまれであった。開腹歴のない,若年者のイレウスについては,Meckel憩室の関与を念頭に置くことが,重要であると考えられた。