2008 年 28 巻 6 号 p. 791-796
IVRの技術の進歩とともに手術を行うことなく外傷性肝損傷の治療ができる症例が増加している。その一方でInterventional Radiology(以下,IVR)の治療基準を明確にしている報告は少なく,緊急開腹かIVRかを迷う症例も存在する。基本的な考え方として,循環動態不安定な症例やFocused Assessment with Sonography for Trauma(以下,FAST)により腹腔内出血が明らかな症例は緊急手術を考慮する。循環動態が安定している症例はSecondary surveyとして造影CT検査を行い,日本外傷学会肝損傷分類を参考に治療方針を決定する。III型損傷は基本的にIVRの適応と考えて良い。開腹かIVRかではなく,手術の後Transcatheter Arterial Embolization(以下,TAE)を行ったり,TAEに引き続き手術を行うといったコンビネーションの治療も今後の選択肢の一つとすべきである。外傷性肝損傷に対する当院の治療方針と当院の救急医療の現状と問題点について言及した。