日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
門脈ガス血症の2手術例
松島 一英ぐし宮城 正典
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2008 年 28 巻 6 号 p. 865-869

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抄録

腸管虚血性疾患に伴う門脈ガス血症を2例経験したので報告する。症例1は78歳男性で,施設で転倒した翌日に紹介受診した。当初より血圧が不安定であり,腹部の圧痛を疑う所見を認めたために腹部CTを施行したところ,門脈内ガスの存在を認めた。同時に造影効果の不良な小腸を一部認め,緊急開腹術を施行した。回腸に50cmに及ぶ壊死を認めたため,同部位を切除し手術を終了した。術後ICUにて多臓器不全が進行し,第40病日に死亡した。症例2は55歳男性で,食欲低下と腹部膨満を主訴に紹介受診した。腹部単純X線写真にて小腸ガスの拡張を認め,腹部造影CTでは著明な腸管壁内ガスと門脈内ガスに加え,下大静脈内ガスも認めた。開腹にて小腸の軸捻転を認め,これを解除した。術後細菌性肺炎を合併し,第65病日に死亡した。門脈ガス血症の手術適応にはいまだに一定のコンセンサスが得られていないが,つねに腹腔内の致死的な疾患を念頭に置きながら診療を進める必要がある。

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© 2008 日本腹部救急医学会
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