2008 年 28 巻 7 号 p. 929-932
教室では上部消化管穿孔に対して,積極的に保存的治療を行っており,十二指腸潰瘍穿孔の78%,胃穿孔の60%が保存的に軽快している。一方,手術例は重症例が多く,このような症例では周術期栄養管理が治療上重要な位置を占めると考えられる。そこで手術症例を対象として,栄養管理を中心にretrospectiveな検討を行った。十二指腸潰瘍穿孔13例,胃穿孔8例の術後の栄養管理は,末梢静脈栄養11例,中心静脈栄養(以下,TPN)5例,経腸栄養5例であり,4例は術中に腸瘻が造設され,うち3例は術後36時間以内の早期経腸栄養が施行されていた。術後合併症発生率は67%と高く,経口摂取開始時期は7~36日(平均12日)と比較的遅かった。縫合不全が4例に認められたが,経腸栄養で管理された2例は,TPNで管理された2例に比べて経口摂取時期が早く,在院期間も短かった。当科の手術症例は重症例が多く,術後合併症発生率が高く,経口摂取は遅れる傾向にあった。このような症例では,積極的に空腸瘻を造設して経腸栄養を施行することが,栄養管理上の重要な選択肢の一つとなると考えられた。