2008 年 28 巻 7 号 p. 969-972
症例は60歳代男性。上腹部痛を主訴に当院受診。8年前に重症急性膵炎による手術既往を認めた。精査にて膵体部の壊死性変化を伴う重症急性膵炎と診断し,持続動注療法を開始。感染の併発なく炎症の鎮静化が得られたが,仮性嚢胞の形成が認められた。食事摂取の度に炎症の再燃を繰り返すため,開腹下に壊死物質除去術および嚢胞空腸吻合術を施行。壊死物質は小腸腸間膜内にも広がっていたため,腸間膜を経由し嚢胞内に洗浄用チューブを留置した。術後経過はおおむね良好であり,51病日に退院となっている。壊死性膵炎後の膵仮性嚢胞はOrganized Pancreatic Necrosis(以下,OPN)と呼ばれ,治療においては壊死物質を十分に除去することで,感染併発を防ぐことが必要とされる。本症例のように膵管との交通が疑われかつ,壊死物質が広範に存在しているOPNに対し,内瘻化と同時に洗浄用チューブ外瘻を併施することは有効な方法であると考えられた。