日本腹部救急医学会雑誌
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特集:高齢者腹部救急疾患の問題点
高齢者大腸穿孔の特徴
─教室での高齢者大腸穿孔例の検討─
片山 真史櫻井 丈大坪 毅人
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2009 年 29 巻 6 号 p. 867-872

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抄録

高齢化によって大腸穿孔の原因である大腸癌や大腸憩室の罹患率は増加傾向にあり,日々の診療において大腸穿孔を経験する機会は増加している。大腸穿孔は穿孔直後より bacterial peritonitisを引き起こし,敗血症や多臓器不全などの重篤な状態に陥りやすいため迅速な対応が要求される。特に高齢者ではより迅速な対応が必要となるが,腹膜炎症状を欠くこともあり診断に苦慮することもある。本稿では,教室での高齢者大腸穿孔の臨床的特徴を検討した。救命率は62.5%であり,発症後手術までの経過時間は救命例で有意に短かった。穿孔原因は大腸癌が最も多く,部位は S結腸が最多であった。術前のショック状態,白血球減少症,DICの直接死亡率はそれぞれ57.1%,62.5%,71.4%と高率であり,予後不良因子と考えられた。手術はHartmann手術が多く,約半数に PMXや CHDFなどの血液浄化療法が施行されていた。高齢者では全身の予備能力が低下しており,血液浄化療法などを併用した集中治療を行ったとしても,依然予後不良である。高齢者大腸穿孔の治療成績向上には,より迅速な診断・治療が要求される。そのためには,高齢者の特性を十分に認識し診療を行うことが肝要である。

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© 2009 日本腹部救急医学会
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