2009 年 29 巻 6 号 p. 917-920
輸入脚症候群は時に重篤な経過をたどるため,早期の診断と治療が求められる。われわれは胃切除術から35年経過後に発症した輸入脚症候群を診断し,内視鏡的ドレナージののち待機的手術とした1例を経験したので報告する。症例は69歳の男性,腹部膨満と動悸を主訴に当院に救急搬送され入院となった。35年前に胃切除術の既往があった。腹部CTにて十二指腸の拡張および急性膵炎の所見を認めた。上部消化管造影と内視鏡検査にてBillrothII法再建で,輸入脚の狭窄を認めたため,急性輸入脚症候群と診断した。これに対し,輸入脚内に,内視鏡下にドレナージチューブを留置した。その後の精査で十二指腸からの後腹膜腔への穿通を認めたため,ドレナージチューブを,より太経のイレウス管へ入れ替え十分ドレナージした。その後保存的に穿通は改善したが,再燃予防のため手術を施行した。前手術はBraun吻合を伴わないBillrothII法結腸前再建であり,輸入脚は長く,折れ返って狭窄していた。癒着を剥離しBraun吻合を置いた。術後経過は良好であった。