2009 年 29 巻 7 号 p. 1021-1023
症例は65歳の男性で,腹痛・発熱で発症し近医を受診。回盲部周囲の炎症を指摘され当院を紹介された。腹部では,臍部・右下腹部に圧痛を認めた。CTでは回盲部付近回腸側に34×28mm大のlow density areaを認め,内部にbone densityが確認され周囲fatの炎症所見を示した。発症前にぶり大根を食べていたことから魚骨穿孔による腹腔内膿瘍と診断した。抗生剤・絶飲食のみでは改善が得られないため,最終的には手術を行った。開腹所見では虫垂先端に穿孔部を認め,同部位に骨片が確認され,これを中心に周囲膿瘍が形成されていた。虫垂切除術・洗浄ドレナージを施行した。誤嚥魚骨による消化管損傷は特異的な症状がないが本症例では詳しい食事歴の聴取とmulti detector-row computed tomography(MD-CT)により診断が可能であった。