日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
盲腸悪性リンパ腫穿孔の1例
森 周介小関 宏和笹原 孝太郎
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2009 年 29 巻 7 号 p. 1045-1049

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抄録

症例は85歳の女性。腹痛,発熱を主訴に近医を受診し入院加療を受けていたが,改善しないため発症より6日後に当院に紹介となった。来院時腹部全体に強い圧痛と筋性防御を認めた。腹部CTで肝表面に遊離ガスあり,回盲部に空洞を伴う巨大腫瘍性病変および膿瘍形成を認め,消化管穿孔による腹膜炎の診断で緊急手術を施行した。開腹所見では,骨盤内に一塊となり変色した長い範囲の小腸を認め,これを剥離すると多量の白色膿汁が流出した。膿瘍腔を構成していた約2mの回腸を含む回盲部切除術を施行した。摘出標本の肉眼所見では,盲腸壁が著しく肥厚し,割面は白色充実性で内腔は比較的保たれていた。虫垂根部近傍に大きな穿孔部を認め,虫垂は原形を留めず同定できなかった。病理組織検査所見では,大腸粘膜固有層から腸壁外組織に及ぶ多形性異型細胞の増殖を認め,免疫染色の結果diffuse large B cell lymphomaと診断した。術後一旦は回復したが117日目に死亡した。

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© 2009 日本腹部救急医学会
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