抄録
まれな外傷性腎梗塞を経験したので報告する。症例は61歳,男性。工場内で作業中に約8mの高さから転落し受傷。軽度の肺挫傷,肝損傷および右肋骨骨折,右橈骨骨折,骨盤骨折,右大腿骨骨折があり,造影CT検査にて右腎臓の造影不良を認めた。血管造影検査を行ったところ右腎動脈が起始部で途絶しており,血行再建を目的に開腹術を施行した。しかし右腎臓の鬱血は高度であったため右腎を摘出した。術後,肺炎による人工呼吸管理が長期化し退院まで100日を要した。外傷性梗塞腎に対する血行再建の成績は悪く,本症例のような血行動態が安定している片側腎梗塞の場合は治療方針として保存的療法を第1選択にすべきと思われた。