日本腹部救急医学会雑誌
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特集:Oncologic emergencyの診断と治療1
手術不能な胃癌原発巣・術後再発巣からの動脈性出血に対してTAEが有効であった3例
設楽 兼司福成 博幸馬場 裕信松永 浩子吉田 剛林 哲二
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2010 年 30 巻 5 号 p. 651-657

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抄録

高度に進行した胃癌原発巣や術後再発巣からの活動性動脈性出血は患者のQOLを低下させるばかりでなく,時に致命的となり得る。それらの出血に対しTAEにて救命し,その後のQOLも良好であった症例を3例経験した。症例1:46歳男性。2006年10月,他院で傍大動脈リンパ節転移を伴う進行胃癌に対し胃全摘を施行し,当院内科で化学療法を行っていた。2008年2月に吐下血で入院。腹部CTで脾動脈周囲に血腫があり,腹部血管造影で脾動脈からの出血を認めマイクロコイルで塞栓。その後7ヵ月間外来化学療法を継続し得た。症例2:76歳男性。2000年6月,幽門狭窄を伴う切除不能胃癌に対し胃空腸吻合術を施行。4ヵ月後に吐下血あり。腹部血管造影にてSMA領域の腫瘍血管から出血を認めマイクロコイルで塞栓。さらに3ヵ月後にも出血をきたし左胃動脈下行枝,次いで同動脈本幹を塞栓。初回出血から原病死までの8ヵ月間,自宅療養が可能であった。症例3:77歳男性。1998年10月,進行残胃癌で残胃全摘+横行結腸合併切除,R-Y Jパウチ再建を施行。2001年6月吐下血にて入院。腹部血管造影にて挙上空腸枝からの出血あり,マイクロコイルで塞栓。以後原病死までの約2年間外来化学療法が可能であった。病巣からの活動性出血を伴う高度進行胃癌患者・胃癌再発患者において患者のQOLを改善・維持するためにTAEは有効な方法であると考えられた。

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© 2010 日本腹部救急医学会
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