2014 年 34 巻 6 号 p. 1123-1127
要旨:門脈ガス血症に対し保存的治療を行った症例が報告されている。しかし,保存的治療の適応に関しての報告は少ない。今回,われわれは当院における門脈ガス血症症例を後方視的に解析し,保存治療可能な因子を検討した。2007年1月から2014年5月までに当院で認められた門脈ガス血症33症例を解析した。保存的治療が可能であったA群14例,手術を要したあるいは死亡したB群19例の2群間にわけて検討した。単変量解析において年齢,消化管出血の有無,脈拍数,呼吸数,systemic inflammatory response syndrome(以下,SIRS)の有無,乳酸値,造影効果,腹水の有無などが有意な項目であった。多変量解析では有意な所見を得られなかった。高乳酸血症またはSIRSを有しない症例では,全例保存的治療可能であった。腸管虚血がなくまた画像で原疾患の確定がつかない症例に対してはSIRS,高乳酸血症を用いるとよい。