2014 年 34 巻 6 号 p. 1185-1190
誤飲された消化管異物は,多くが消化,自然排泄されるが,まれに消化管損傷をきたし,急性腹症の原因となる。本邦では魚骨によるものが比較的多い。今回われわれが経験した魚骨による急性腹症8例について,文献的考察を加えて報告する。症例は55~86歳(平均74.1歳),男性4例,女性4例。主訴はすべて腹痛であった。穿孔または穿通部位は小腸6例,結腸2例であった。7例は治療前に魚骨による急性腹症と診断された。2例は保存的治療により軽快した。外科手術を実施した6例の内2例は腹腔鏡補助下手術が可能であった。魚骨による急性腹症は食事摂取などの病歴に加え,CTにより高率に診断可能である。多くの症例は外科手術の適応だが,保存的治療により軽快する症例もあり,治療方針の決定には画像所見や腹部所見を十分に考慮する必要がある。外科手術については従来の開腹手術に加え,腹腔鏡を用いることでより低侵襲な治療が可能になる場合もある。