2014 年 34 巻 6 号 p. 1205-1208
症例は83歳,女性。認知症で当院精神科入院中,黒色便および腹部膨満感の精査目的に腹部CT検査を施行したところ腹腔内遊離ガスを認め当科紹介となった。腹痛なく血液検査所見も軽微な炎症反応上昇のみ,また腹部CT検査でも腸管気腫を伴う小腸の拡張のみであったが消化管穿孔を否定できず,緊急手術を行った。腹腔内の汚染はなく,消化管穿孔や血流障害も認められなかったが,小腸の拡張と腸管・腸間膜の気腫性変化を認めた。術中内視鏡検査を施行し,多発性びらん・小潰瘍が認められ,虚血性変化やNSAIDs潰瘍による腸管気腫症が疑われたが確定診断には至らなかった。腸管気腫症に伴う腹腔内遊離ガスと診断し試験開腹で終了した。腹腔内遊離ガスを伴った腸管気腫症では消化管穿孔の可能性も否定できず,手術適応の判断に難渋することもあるが,理学所見・血液検査所見・画像検査所見などからその適応を総合的に判断する必要があると考えられた。