日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
症例報告
S状結腸間膜窩ヘルニアによるイレウスに対して緊急手術を施行した1例
田中 克仁横山 裕之平田 伸也中西 香企森 憲彦園原 史訓谷口 健次
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 34 巻 7 号 p. 1395-1399

詳細
抄録

症例は開腹歴のない49歳の女性で,腹痛を主訴に近医を受診し,腸閉塞の疑いで当院へ紹介となった。腹部単純X線検査で小腸の著明な拡張と鏡面形成像を認め,腹部CT検査では,Douglas窩に腹水が貯留し,S状結腸の背側でclosed loop状の小腸拡張を認めた。S状結腸間膜に関連した内ヘルニアによる絞扼性イレウスを疑い,同日緊急手術を施行した。開腹するとS状結腸間膜窩に回腸末端から210cmの小腸が約5cm嵌入しており,S状結腸間膜窩ヘルニアと診断した。用手的に整復後腸切除はせずヘルニア門を縫合閉鎖し手術を終了した。術後経過は良好で術後8日目に退院した。S状結腸間膜窩ヘルニアはS状結腸間膜と後腹膜との癒合不全部に腸管が嵌入する内ヘルニアであり,まれな疾患である。腹部CTが診断には有用で,本疾患を念頭に早期に診断し手術を行うことにより腸管の切除を回避できる可能性があると思われた。

著者関連情報
© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
前の記事 次の記事
feedback
Top